2015年のサトイモ
今年は雨が少なく成長が遅かったサトイモがこのところやっと成長を始めました。
1.サトイモ栽培の歴史
サトイモ(里芋、学名:Colocasia esculenta )は、東南アジアが原産のサトイモ科サトイモ属の植物です。サトイモ属は東南アジアおよび インド亜大陸で約10種が知られています。日本で栽培されているサトイモは、芋を食用とする(Colocasia esculenta)と、芋ができずに芋茎だけを食べる(Colocasia giganta)の2種がありますが、一般的にサトイモといえば(Colocasia esculenta)のことを指します。
サトイモ(Colocasia esculenta)の原産地は熱帯のインドからマレー半島の大河川流域で、紀元前2000年頃までには栽培化されていたと考えられています。その後に起きた民族の大移動とともに世界各地に広がり、稲作に先立って縄文時代に日本にも渡ってきたと考えられています。世界各地に広がったサトイモ(Colocasia esculenta)には、大きく中国を経て日本にまで広がった温帯性品種群(サトイモ:一年草、主に3倍体品種群)と、オセアニア一帯からマダガスカルまで伝播した熱帯性品種群(タロイモ:多年草、主に2 倍体品種群)があります。サトイモとタロイモでは形状、特性などが若干異なります。
ほとんどのサトイモは、種子で増えるのではなく、親の体の一部を種芋として再生産に利用しています(栄養繁殖性作物)。このため二千〜三千年にわたって同じ環境で栽培されてきたサトイモは、より環境に適した系統(変異系統)が残り、数々の在来品種になったと考えられています。
2.サトイモと餅無し正月
正月は、あらゆるものの生命を更新してくれる年神さまを迎える、一年で最大の行事です。日本全国ほとんどの地域で正月は、重要な作物であるイネから作る餅を食べるのが一般的ですが、モチを食べずにイモ類や豆類などで祝う『餅なし正月』のところもあります。それは、「正月を起点としたある期間に餅をつかず、食べず、供えずという禁忌を伝承している家、一族、地域のあるころ」と定義されています。
モチに代わって用いられる儀礼食用作物としては、東日本では山芋が、西日本ではサトイモやアワ、タロイモなどが用いられています。儀礼作物としてのヤマイモとサトイモの分布境界は、中部地方から関東地方です。近年の民族学的な研究によれば、このことは日本の歴史において稲作文化の伝播に先立って、イモなどの畑作文化が伝播し存在していたことが示逡されています。サトイモは古来より重要な作物だったことがうかがえます。
余談ですが、東北地方はこの区分けによれば“山芋地域”になります。筆者の実家では、近所では通常正月は3日間餅を食べるのが一般的であるのに対して、餅は元旦の朝1日だけで後は山芋を食べるきまりとなっていましたが、今考えるとこれは“餅無し正月”が変形したものかもしれません。
*参考資料
*新特産シリーズ サトイモ:松本美枝子 著
*海を渡ったタロイモ:橋下征治 著
*イモと日本人:坪井洋文著