野の花ファームのサトイモ(2)
今回は前回のサトイモの話題の続きです。
前号より続く。
6.サトイモの成分
デンプンを主成分とし、低カロリーで食物繊維も豊富です。品種、作型により成分含有量には差がありますが、食品成分表によれば、100g中、水分は70〜84g、炭水化物13〜27.6g、カリウム640mg、カルシウム10〜39mgを含み、芋類の中ではカロリーが低く、ジャガイモの2/3程度です。炭水化物は大部分がデンプンですが、ペントザン、ガラクタン、デキストリン、ショ糖、タンパク質、ビタミン類を含んでいます。
独特の「ぬめり」がありますが、これはムチン、ガラクタンという成分によるもので、ムチンには消化促進、ガラクタンには免疫力向上作用があるとされています。また、高血圧防止(Naを体外に排出する)効果の高いカリウム含有量が多いこと、ビタミンA(カロテン)が多いことなどより、ヘルシーで機能性に富んだ芋といわれています。アクにはわずかにホモゲチシン酸とシュウ酸カルシウムが含まれており、皮をむくときに皮膚にふれると刺激でかゆくなることがあります。
サトイモの葉柄は皮をむいて芋茎として利用されています。葉柄は、生では強いえぐ味ないし渋みがありますが、これはある種のタンパク質が付着したシュウ酸の針状結晶が多数あるためで、その結晶が口腔内に刺さることにより引き起こされます。緑色の葉柄は特にえぐみが強く食用にはなりませんが、赤紫色の葉柄は、えぐみが少ないため乾燥して芋茎として保存食にされます。加熱等でタンパク質を変性させることにより渋みは消えるので、加工の再には注意が必要です。
7.サトイモの利用
サトイモは、煮物の材料として日本では極めて一般的な存在です。各地の芋煮会、いもたき(又はいもだき)の主材料でもあります。特に宮城県とお隣の山形県は芋煮会がさかんです。サトイモは、親イモに寄り添うように、子イモ、孫イモとたくさんのイモができることから、これら子イモや孫イモを「芋の子(いものこ)」と呼びます。このため子孫繁栄の縁起物として正月料理等にも用いられています。
サトイモの茎の部分をそのまま、あるいは干して乾燥させた物を『ずいき』と呼び食用にされます。主に煮付けなどにして調理されています。
サトイモはまた、民間薬としても古くから利用されています。現在でも湿布用などとしてサトイモ粉が販売されています。
牧野和漢薬草大図鑑には以下のように記載されています。
<薬効>球茎は灸瘡、湯によるやけど、指関節の腫、耳下腺炎、顎下腺炎、乳腺炎、歯痛、打ち身、解熱などに用いられる。葉茎はへびに噛まれた傷や虫さされに、黄水瘡などに用いる。
<使用法>赤く腫れて熱をもつ場合や痛む場合に湿布薬として使用する。採取後、よく水洗いして皮をむきすりおろす。同量の小麦粉を合わせ、全量の約10%を目安としてヒネショウガをするおろして混ぜ合わせる。すり鉢でよくすり混ぜてなめらかにする。患部より大きめのリント布かガーゼなどに、3mm位の厚さになるように均等に伸ばし、二三重にしたガーゼをのせ患部にあてる。寒い時期には温めてから貼るとよい。また、足の土踏まずの部分にあてておくと解熱効果がある。患部にオリーブオイルを塗ってから湿布をするとかぶれにくくなるが、かゆくなったときは使用を中止する。かぶれやすい体質の人は要注意。
8.世界のサトイモ
サトイモは東南アジアや太平洋諸島などの地域ではタロとよばれ、古くから伝統的生活を営む民族の食生活を支えてきました。この地域は、広くタロイモ文化圏ともいわれます。熱帯アジアやオセアニア島嶼域、アフリカの熱帯雨林地帯ではさらに多くの種や、その品種群が多く栽培されており、多くの民族や地域で主食とされています。畑作だけでなく水田耕作でも栽培されています。
パプアニューギニアの熱帯雨林では、縄文時代に行なわれていたような、焼き畑による移動耕作が今でも行なわれています。日本では南西諸島などで”たいも(田芋(ターヌウム))”とよばれる品種が水田で栽培されています。フィジー諸島やハワイ諸島などでもタロイモの灌漑(水耕)栽培が盛んです。
ハワイでは、なによりもタロイモが古くからハワイアンの食体系の中華をなす食べ物であり、神殿には必ず捧げられるお供えものでした。料理方法は、石蒸し法(イム)が一般的です。この石蒸し焼きは、デイやバナナの葉にタロイモ、ヤムイモ、豚肉、鶏肉などを一緒にくるんで、焼き石で蒸し焼きにするものです。いもをすりつぶして醗酵させた、どろどろした餅状の”ポイ”は、保存食、嗜好品として食べられています。
記 阿部俊暢
参考資料
* サトイモ(栽培から貯蔵、種芋生産まで):農文協
* フリー百科事典ウイキペデイア(日本語版、英語版)
* 海を渡ったタロイモ:関西大学出版部