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2014年7月

2014年7月26日 (土)

野の花ファームのサトイモ(2)

今回は前回のサトイモの話題の続きです。

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前号より続く。

 6.サトイモの成分

 デンプンを主成分とし、低カロリーで食物繊維も豊富です。品種、作型により成分含有量には差がありますが、食品成分表によれば、100g中、水分は70〜84g、炭水化物13〜27.6g、カリウム640mg、カルシウム10〜39mgを含み、芋類の中ではカロリーが低く、ジャガイモの2/3程度です。炭水化物は大部分がデンプンですが、ペントザン、ガラクタン、デキストリン、ショ糖、タンパク質、ビタミン類を含んでいます。

独特の「ぬめり」がありますが、これはムチン、ガラクタンという成分によるもので、ムチンには消化促進、ガラクタンには免疫力向上作用があるとされています。また、高血圧防止(Naを体外に排出する)効果の高いカリウム含有量が多いこと、ビタミンA(カロテン)が多いことなどより、ヘルシーで機能性に富んだ芋といわれています。アクにはわずかにホモゲチシン酸とシュウ酸カルシウムが含まれており、皮をむくときに皮膚にふれると刺激でかゆくなることがあります。

 サトイモの葉柄は皮をむいて芋茎として利用されています。葉柄は、生では強いえぐ味ないし渋みがありますが、これはある種のタンパク質が付着したシュウ酸の針状結晶が多数あるためで、その結晶が口腔内に刺さることにより引き起こされます。緑色の葉柄は特にえぐみが強く食用にはなりませんが、赤紫色の葉柄は、えぐみが少ないため乾燥して芋茎として保存食にされます。加熱等でタンパク質を変性させることにより渋みは消えるので、加工の再には注意が必要です。

7.サトイモの利用

 サトイモは、煮物の材料として日本では極めて一般的な存在です。各地の芋煮会、いもたき(又はいもだき)の主材料でもあります。特に宮城県とお隣の山形県は芋煮会がさかんです。サトイモは、親イモに寄り添うように、子イモ、孫イモとたくさんのイモができることから、これら子イモや孫イモを「芋の子(いものこ)」と呼びます。このため子孫繁栄の縁起物として正月料理等にも用いられています。

 サトイモの茎の部分をそのまま、あるいは干して乾燥させた物を『ずいき』と呼び食用にされます。主に煮付けなどにして調理されています。

  サトイモはまた、民間薬としても古くから利用されています。現在でも湿布用などとしてサトイモ粉が販売されています。

牧野和漢薬草大図鑑には以下のように記載されています。

 <薬効>球茎は灸瘡、湯によるやけど、指関節の腫、耳下腺炎、顎下腺炎、乳腺炎、歯痛、打ち身、解熱などに用いられる。葉茎はへびに噛まれた傷や虫さされに、黄水瘡などに用いる。

 <使用法>赤く腫れて熱をもつ場合や痛む場合に湿布薬として使用する。採取後、よく水洗いして皮をむきすりおろす。同量の小麦粉を合わせ、全量の約10%を目安としてヒネショウガをするおろして混ぜ合わせる。すり鉢でよくすり混ぜてなめらかにする。患部より大きめのリント布かガーゼなどに、3mm位の厚さになるように均等に伸ばし、二三重にしたガーゼをのせ患部にあてる。寒い時期には温めてから貼るとよい。また、足の土踏まずの部分にあてておくと解熱効果がある。患部にオリーブオイルを塗ってから湿布をするとかぶれにくくなるが、かゆくなったときは使用を中止する。かぶれやすい体質の人は要注意。

8.世界のサトイモ

 サトイモは東南アジアや太平洋諸島などの地域ではタロとよばれ、古くから伝統的生活を営む民族の食生活を支えてきました。この地域は、広くタロイモ文化圏ともいわれます。熱帯アジアやオセアニア島嶼域、アフリカの熱帯雨林地帯ではさらに多くの種や、その品種群が多く栽培されており、多くの民族や地域で主食とされています。畑作だけでなく水田耕作でも栽培されています。

 パプアニューギニアの熱帯雨林では、縄文時代に行なわれていたような、焼き畑による移動耕作が今でも行なわれています。日本では南西諸島などで”たいも(田芋(ターヌウム))”とよばれる品種が水田で栽培されています。フィジー諸島やハワイ諸島などでもタロイモの灌漑(水耕)栽培が盛んです。

 ハワイでは、なによりもタロイモが古くからハワイアンの食体系の中華をなす食べ物であり、神殿には必ず捧げられるお供えものでした。料理方法は、石蒸し法(イム)が一般的です。この石蒸し焼きは、デイやバナナの葉にタロイモ、ヤムイモ、豚肉、鶏肉などを一緒にくるんで、焼き石で蒸し焼きにするものです。いもをすりつぶして醗酵させた、どろどろした餅状の”ポイ”は、保存食、嗜好品として食べられています。

                                   記 阿部俊暢

 参考資料

*  サトイモ(栽培から貯蔵、種芋生産まで):農文協

*  フリー百科事典ウイキペデイア(日本語版、英語版)

*  海を渡ったタロイモ:関西大学出版部

2014年7月19日 (土)

野の花ファームのサトイモ

蔵王町は宮城県では1番のサトイモの産地です。写真は野の花ファームのサトイモです。

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1.サトイモとは

 サトイモ(里芋、学名:Colocasia esculenta,)は、サトイモ科サトイモ属の多年草です。草丈50cm〜100cm以上に達し、地下の球茎は楕円形で褐色の繊維に包まれています。葉は根生し、葉柄が長く、葉身は卵状広楕円形です。花期は夏〜秋で、まれに肉穂花序に開花するのが見られます。

 原産地は熱帯のインドからマレー半島の大河川領域とされ、紀元前二十二世紀前後に起きた大移動とともに世界各地に広がったと考えられています。サトイモはこの時期も民族の移動とともに、中国や太平洋一帯、アフリカまで達し、その後、アフリカからスペイン、熱帯アメリカまで広がったと考えられています。今日、サトイモの栽培量は、アジアだけでなく、アフリカやオセアニアでも多く、今も主食としている地域があります。日本には縄文時代に伝わったとされ、山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることからサトイモという名が付いたとされています。球茎、葉柄を食用とし、多くの栽培品種があります。

2.サトイモ科とサトイモ属について

 サトイモ (Araceae)科 は、オモダカ目を構成する科の一つです。温暖で湿潤な環境を好み、湿地や沼地に生育するものが多く、花軸に密集した小さな花(肉穂花序)と、それを囲むように発達した苞(仏炎苞)を持つのが特徴です。

 サトイモやコンニャクなど、食品として重要なものや、ミズバショウなどのように、美しい葉や花を観賞するために栽培されている種も多くあります。

 サトイモ(Colocasia)属は、サトイモ科の顕花植物で、ポリネシアと南東アジアの熱帯原産の25種以上が含まれています。タロイモは、サトイモ科サトイモ属の植物のうち、根茎などを食用とするために栽培されている栽培種の総称です。日本で栽培されているサトイモやエビイモなどもタロイモの一種であり、サトイモはタロイモのうち最も北方で栽培されている品種群です。くさび型の葉が非常に大きいため、英名を「Elephant Ear(象の耳)」ともいいます。

 熱帯アジアやオセアニア島嶼域、アフリカの熱帯雨林地帯ではさらに多くの種や、その品種群が栽培されており、これを主食としている民族や地域も多くあります。ポリネシアのタロイモから作るポイは有名です。

3.日本におけるサトイモ栽培

 縄文時代には、南中国(長江流域)から多くの人々が渡来したことが知られていて、そのときにサトイモがもたらされたと考えられています。日本葉サトイモ生産地の北限で、特に気温の低い東北•北陸•高冷地でも安定して栽培されるようになったのは、長い時間をかけて低温に強い系統を選び出し、種芋の貯蔵方法や栽培方法を確立した縄文人の努力のたまものです。東北、北陸地方や長野県などにある伝統野菜としてのサトイモは、その成果です。

 縄文人は、狩猟、採取と焼畑によって食料を確保していました。焼畑農業とは、雑穀、豆類、サトイモの順番に最場され、二〜三サイクルが終わると場所を変えて再び焼畑を行なうというものであったと考えられています。その後、稲作技術や製鉄技術の渡来により、日本は弥生時代に移っていくわけですが、サトイモの歴史は、縄文人がほろんだわけではなく、新しい弥生文化の担い手である弥生人と交じり合って現在にいたっていることを示していると言えます。

 サツマイモが日本で食べられるようになったのは十八世紀前半、ジャガイモは十九世紀前半と遅く、それまでは芋といえばサトイモのことで、日本人に広く愛されてきました。サトイモ料理といえば、味噌汁、煮転がし、田楽などが思い浮かびますが、今日では芋煮や、シチュー、グラタン、コロッケなどにも広く利用されています。

 

4.多様なサトイモの品種

 サトイモは、北海道を除く日本各地で栽培されていますが、気象条件や食文化がそれぞれ異なるため、品種•栽培方法も地域により異なっています。

 主な品種としては、【石川早生】、【土垂(どたれ)】が有名です。その他の品種には、【蓮葉芋(はすばいも)】、【えぐ芋】【大吉】【唐芋】【八つ頭】などがあります。そのほか、限られた地域だけで栽培されてきた品種として、【大野芋】、【八名丸】【味間芋】【善光寺芋】【二子芋】など様々な地方品種があります。

 

(1)石川早生

 石川早生(いしかわわせ)は土垂と並び里芋の代表的な品種です。大阪府南河内郡の石川村(現河南町)がこの芋の原産地とされ、その地名がつけられています、またその名のとおり早生品種で、宮崎県では7月から収穫が始まります。石川早生の子芋は蒸したり茹でると手で簡単につるっと皮がむけます。肉質に粘りがあり、蒸したときに皮離れがいい石川早生ならではの食べ方です。

 

(2)土垂

 土垂(どだれ)は主に関東地方で多く栽培され、里芋=土垂(どだれ)というくらい定着しています。特有のぬめりがあり、肉質もねばりがあり煮くずれしにくいのが特徴です。晩生種で貯蔵性が高く、一年中出回っています。また収量性や栽培しやすいこともあり家庭菜園でも人気があります。

 

 当野の花ファームの栽培種は、土垂系の長頭種です。肉質がしっかりして、ぬめりが強いのが特徴です。

 

5.日本のサトイモの生産量

サトイモは北海道を除日本各地で栽培されています。平成24年野菜出荷統計によれば、平成24年のサトイモの総生産量(そうせいさんりょう)は172,500tで、主な生産県は以下の3県です。

 1位 千葉県 22,400t

 2位 宮崎県 25,900t

 3位 埼玉県 16,300t

 宮城県は600tと主要3県よりはだいぶ少なめですが、県内では蔵王町が1番の生産地です。

 サトイモは日本人の好きな野菜の一つであり、1971年には56万tが国内で生産されていましたが、現在は18万地下まで減少しています。これは主に中国からの安価な生鮮および冷凍サトイモが輸入されるようになったためであり、価格の急激な低下により、国内の生産者の経営が成り立たなくなり生産が縮小したと思われます。しかし、近年、農薬などによる輸入食材の安全性が懸念されるようになり、生鮮サトイモはほとんど国産でまかなわれるようになっています。

次号に続く。

                        記 阿部俊暢

参考資料

*  サトイモ(栽培から貯蔵、種芋生産まで):農文協

*  フリー百科事典ウイキペデイア(日本語版、英語版)

2014年7月12日 (土)

ウオールジャーマンダーとヒョウモンチョウ

 先日ご紹介したウオールジャーマンダーの花にきた、ヒョウモンチョウの写真です。近づいてもなかなか逃げないで、いかにも写真をとってくれとポーズをとっているように見えたので撮影してご紹介しました。

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 ヒョウモンチョウはタテハチョウ科ドクチョウ亜科内のひとつの分類単位です。本族に分類されるチョウは、和名の通り黄色の地に黒い斑点が並んだヒョウ柄模様の翅を持つものがほとんどです。寒帯から熱帯まで全世界に分布していますが、分布の中心は北半球の温帯・寒帯地域で、チョウとしては北方系の分類群として位置づけられています。このうち日本では8属・14種が見られます。

 どの種も似ていて見分けるのがむずかしいのですが、翅の表側の紋よりヒョウモンチョウ(ナミヒョウモン:Brenthis daphne)ではないかと思います。

 ウオールジャーマンダーやキャットミントの花はいろいろなチョウやハチに人気で、この他モンシロチョウやキチョウ、クマバチやマルハナバチなどが常に群れています。

2014年7月 5日 (土)

野の花ファームのハーブ(3)

今回も前回に続いて農園の片隅のハーブの紹介です。今回はウオールジャーマンダー、サントリナグリーン、クラリセージ、ローマンカモミールの花を紹介します。

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ウオールジャーマンダー(Teucrium chamaedrys)は、シソ科ニガグソ科の多年草です。ウオールジャーマンダーは古代ギリシア時代から使用されてきたハーブであり、デイオスコリデスも咳と喘息に薦めています。英国王立園芸協会のハーブ大百科には、”食欲不振、胆嚢、消化器系不全、小児の夏の下痢、リウマチ性関節炎、鼻腔カタル、皮膚の発疹、怪我(ヘビの咬み傷)に内服する”、と記載されています。近年では、肝臓への毒性が指摘されており、スカルキャップへの不純物混入問題で話題のハーブでもあります。

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 サントリナ(ワタスギギク)属の植物は、地中海地方を原産とする、芳香のある小さい常緑約15種類からなっています。最も知られている植物は、シルバー色の葉をもつサントリナグレー(Santolina chamaecyparissus)です。写真は緑色の強い香りの葉をもつグリーンサントリナ(Santolina virens)と思われます。サントリナグレー(Santolina chamaecyparissus)は17世紀のイギリスのハーブ療法家、カルペッパーが、”有毒な咬み傷、腸内寄生虫、皮膚炎の治療薬である”と述べています。しかし、現在はほとんど使用されておらず、もっぱら香りが虫除けなどとして利用されているようです。

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 クラリセージ(オニサルビア:Salvia sclarea)は、シソ科セージ(アキギリ:サルビア)属の2年草です。ヨーロッパから中央アジア原産で、乾燥した草地に生え、高さは1~1.5メートルになります。葉は広卵形で、細かい銀白色の毛に被われています。6月から7月ごろ、茎頂に輪生状に、淡い藤色からピンク色、白色などの花を咲かせます。花と葉からとれる精油は甘くてスパイシーな香りがあり、特に女性のホルモンバランス調整の精油として知られています。生の葉や花は食用になり、サラダなどに加えられます。

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ローマンカモミール(Chamemelum nobile)はキク科ローマカミツレ属の多年草です。一般的にいわれているカモミールは、別種のジャーマンカモミール(Matricaria recutita)のことをさします。ジャーマンカモミールと同様に、花を染色、ハーブとして入浴剤などに用いられます。全草に香りがあり、花から淹れたハーブティーには苦みがある点がジャーマンカモミールとの大きな違いです。花かとれる精油は鎮静、鎮痛の精油として、マッサージなどに利用されています。

プロフィール

フォトアルバム

阿部俊暢

宮城県仙台市出身。定禅寺通りのけやき並木と同じ1958年生まれ。2003年阿部代表とともに定禅寺ハーブギャラリーを開業。夢は世界中のハーブを集めたハーブ農場の開設。JAMHA認定ハーバルセラピスト、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。